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5.5:

拡散

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Diffusion

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拡散とは 物質が移動することで密度差を下げる受動運動です 細胞エネルギーを全く必要としません 膜を通過する速度は おおよそ分子の相対疎水性に依拠します 分子の脂溶性が高く無極性であるほど より容易に拡散は起こります これには、酸素や二酸化炭素などの小型気体や ビタミンなどより大型の物質が含まれます 水などの他の電気を帯びず両極性がある分子や グルコースなどの大型の分子は通過しますが 速度は非常に遅くなります それに対して、電気を帯びたイオン(大きさを問わない)および 非脂溶性タンパク質は脂質二重層を通過できず 通過には他のメカニズムを必要とします 拡散の後、粒子は運動を続け 不規則に層を通過しますが 行き来が断続的に行われ、総量が変化しないため 動的平衡状態が保たれます

5.5:

拡散

拡散とは、細胞のエネルギーを使わずに、物質が濃度勾配に沿って受動的に移動することです。分子やイオンなどの物質は、細胞質や膜を介して高濃度の場所から低濃度の場所へと拡散します。最終的には濃度が均一となり、物質は無作為に移動するものの、正味濃度変化は生じません。このような状態は動的平衡といい、生体の全体の恒常性を維持するのに不可欠です。

拡散依存的な生物学的プロセス

拡散は、生物が環境とガスを交換する呼吸などの生物学的プロセスにおいて重要な役割を果たしています。空気を吸い込むと、人間の肺の気嚢にあたる肺胞内の酸素濃度は、血液中の酸素濃度よりも高くなります。その結果、酸素はその濃度勾配を減らす方向の血液中に拡散します。血液で運ばれた酸素やその他の栄養素が体の組織に入るためには、濃度勾配を使って組織に拡散しなければなりません。二酸化炭素のような代謝老廃物は、体内組織よりも二酸化炭素の濃度が低い毛細血管へ組織から拡散します。二酸化炭素を含んだ血液は肺に送られて、血液よりも低濃度の肺胞へと容易に拡散します。そうして二酸化炭素は肺胞から体外へ吐き出されます。

植物のガス交換にも拡散が関わっています。光合成に必要な二酸化炭素は、気孔と呼ばれる葉の小さな穴を通って空気中から植物の葉に拡散します。逆に、光合成の副産物として生成された酸素は、気孔を通って葉から空気中へと拡散します。

拡散速度

温度、分子量、溶媒密度、溶解度、分子の濃度勾配の大きさなどの要因が拡散速度に影響します。例えば、溶液中では、各物質は他の物質の濃度勾配とは独立した個々の濃度勾配を持っています。区画間の濃度差が大きいほど、拡散速度は速くなります。その結果、系が平衡に近いほど、拡散速度は遅くなります。

膜を通過する拡散速度は、主に分子の相対的な疎水性に依存します。具体的には、脂質に溶けやすく、非極性の分子ほど、膜を通って拡散しやすくなります。これには、酸素や二酸化炭素のような小さな気体や、ビタミンのような大きな物質も含まれます。また、例えば水や、グルコースのような大きい分子のような、電荷を帯びていないが極性のある分子は速度がかなり遅いものの、膜を通過します。一方、大きさに関係なく帯電したイオンや、脂溶性でないタンパク質は、脂質二重層にはじかれ、脂質二重層を通過するには別の仕組みが必要となります。

単純拡散と促進拡散

単純拡散は、物質が何の補助もなく濃度勾配に沿って膜を通り、直接拡散できる時に生じます。一方、促進拡散は、物質がエネルギーを消費せずに膜を通過するために、膜に埋め込まれた輸送タンパク質を使用する必要のある場合に生じます。

Suggested Reading

Cooper, Geoffrey M. “Transport of Small Molecules.” The Cell: A Molecular Approach. 2nd Edition, 2000. [Source]